ゴルフの「年間王者」は、世界共通のひとつの物差しで決まるわけではありません。男子の米PGA TOURはFedExCup、欧州DP World TourはRace to Dubai、国内男子JGTOは2026年導入のポイントランキング(それ以前は賞金額で決める「賞金王」制度)、米女子LPGAはRace to the CME Globe、国内女子JLPGAはメルセデス・ランキング。賞金額で決める伝統型から、ポイントを積み上げてプレーオフで決める型まで方式はさまざまです。本記事は5つのツアーの年間王者制度を統一フォーマットで横並びにし、「いつ・いくらで・どう計算して」王者が決まるのかを1枚の地図にします。
「賞金王」「年間女王」「ポイントチャンピオン」——ゴルフ中継でよく聞く言葉ですが、その中身はツアーによってまるで違います。大きく分けると次の3系統に整理できます。
さらに、欧州DP World TourのRace to Dubaiのように「賞金とポイントの二重制度」を採る例もあります。以下、5ツアーを1つずつ見ていき、最後に比較表でまとめます。
米PGA TOURの年間王者を決めるのが FedExCup です。2007年に創設され、シーズンを通して大会成績に応じたポイントを加算していきます (PGA TOUR公式)。
レギュラーシーズン終了後、上位選手による「FedExCupプレーオフ」に突入し、最終的に上位30名が最終戦 TOUR Championship (米ジョージア州アトランタ、イーストレイクGC) に進出します。
大きな転換点が 2025年の制度変更 です。それまではFedExCupランキング1位の選手が10アンダーからスタートする「ハンディキャップ方式」でしたが、2025年からこれを廃止。出場30名全員がイーブンパーから始める72ホールのストロークプレーで、純粋に最終戦の成績で年間王者を決める形になりました (PGA TOUR公式発表)。
ボーナスも破格で、FedExCupプレーオフ全体のボーナスプールは総額 約1億ドル、年間王者には 約1,000万ドル が贈られます。さらにレギュラーシーズン首位など段階ごとにもボーナスが配分されます (PGA TOUR公式)。
| 順位 | 選手 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | Scottie Scheffler | 3511.00 |
| 2 | Matt Fitzpatrick | 3329.00 |
| 3 | Cameron Young | 2586.00 |
| 4 | Wyndham Clark | 2255.00 |
| 5 | Chris Gotterup | 2200.00 |
| 6 | Collin Morikawa | 2176.00 |
| 7 | Si Woo Kim | 1938.00 |
| 8 | Ludvig Åberg | 1773.00 |
| 9 | Tommy Fleetwood | 1733.00 |
| 10 | Sam Burns | 1728.00 |
欧州を拠点とする DP World Tour (旧ヨーロピアンツアー) の年間王者制度が Race to Dubai です。2009年に従来の「オーダー・オブ・メリット (賞金ランキング)」を改称・刷新する形で誕生しました (DP World Tour公式)。
特徴は 賞金とポイントの二重的な性格を持つこと。シーズン中の成績でランキングを積み上げ、11月の最終戦 DP World Tour Championship Dubai (アラブ首長国連邦・ドバイ) で年間王者が確定します。
最終ランキング上位の選手には別枠でボーナスプールが配分されます。2025年はボーナスプール総額 600万ドル、年間王者には 200万ドル が贈られました。ボーナスの対象になるには、最終戦を含む規定数以上の対象大会への出場が条件です (DP World Tour公式 ボーナスプール)。
| 順位 | 選手 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | Patrick REED | 2810.92 |
| 2 | Rory MCILROY | 2489.86 |
| 3 | Eugenio CHACARRA | 2138.19 |
| 4 | Jayden SCHAPER | 2014.09 |
| 5 | Casey JARVIS | 1879.30 |
| 6 | Aaron RAI | 1876.50 |
| 7 | Andy SULLIVAN | 1433.73 |
| 8 | Bernd WIESBERGER | 1298.52 |
| 9 | Hennie DU PLESSIS | 1251.96 |
| 10 | Oliver LINDELL | 1250.42 |
国内男子ツアーを運営する JGTO (日本ゴルフツアー機構) は、2026年シーズンから年間王者をポイント制で決める方式に移行しました。各大会の順位に応じたポイント (優勝500ptなど) を積み上げ、大会の格に応じた倍率 (国内メジャー1.25倍・海外メジャー1.5倍など) も加わります。2025年までは、ポイントによる加重を行わず その年に獲得した賞金額そのもので決める「賞金王」制度でした (JGTO公式)。なお賞金ランキング自体は廃止されず、部門別ランキングの一つとして引き続き公表されます。
王者は多くの場合、12月上旬の最終戦 ゴルフ日本シリーズJTカップの結果まで含めて確定します。同大会は1963年から続く伝統の一戦で、その年の活躍者など約30名のみが出場できます。賞金総額は約1億3,000万円、優勝賞金は4,000万円と高額で、ここでの結果が年間ランキングを一気に動かし、「最後の一発逆転」で王者が入れ替わることも少なくありません (ゴルフ日本シリーズJTカップ 公式)。
米女子ツアー LPGA の年間王者を決めるのが Race to the CME Globe です。2014年に導入されたシーズン通算のポイントレースで、PGA TOURのFedExCupやDP World TourのRace to Dubaiに相当する仕組みです (LPGA公式)。
シーズン中の成績でポイントを積み上げ、ランキング上位 60名が11月の最終戦 CME Group Tour Championship (米フロリダ州ネイプルズ、ティブロンGC) に進出します。最終戦は36ホール後のカットがない72ホール競技で、この大会の優勝者がそのままRace to the CME Globeの年間王者となります。
優勝賞金は破格で、2025年は大会総額1,100万ドルのうち優勝者に 400万ドルが贈られました。優勝=年間王者=高額賞金が一本につながる、わかりやすい「勝者総取り」型の最終戦です (CME Group Tour Championship公式)。
| 順位 | 選手 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | Nelly Korda | 3412.62 |
| 2 | Haeran Ryu | 2252.80 |
| 3 | Hyo Joo Kim | 1735.42 |
| 4 | Miyu Yamashita | 1639.04 |
| 5 | Jeeno Thitikul | 1546.62 |
| 6 | Hannah Green | 1330.70 |
| 7 | Lottie Woad | 1317.46 |
| 8 | Ruoning Yin | 1264.66 |
| 9 | Ina Yoon | 1151.07 |
| 10 | Jin Hee Im | 1082.64 |
国内女子ツアー JLPGA (日本女子プロゴルフ協会) の年間女王を決めるのが メルセデス・ランキングです。2012年に「年間を通じての総合的な活躍度を評価するランキング」として制定されました (JLPGA公式)。
最大の特徴は、大会の格 (グレード) に応じてポイントを加重する点です。3日間競技を基準として、
といった重み付けでポイントが積み上がります。賞金額ではなく「どの格の大会で、どれだけ上位に入ったか」を測る設計です (JLPGA公式)。
注意したいのが、かつての「賞金ランキング」との関係です。JLPGAは 2022年から、シードやリランキングなど従来は賞金ランキングで行っていた制度をメルセデス・ランキングに一本化しました。これにより、年間女王 (JLPGA Mercedes-Benz Player of the Year) はメルセデス・ランキング1位の選手に贈られ、4年間のシード権も付与されます。賞金女王 (賞金ランキング1位) と年間女王が別人になる年もあるため、両者の混同には注意が必要です (JLPGA公式)。
| 順位 | 選手 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | Shuri Sakuma | 1190.42 |
| 2 | Shiho Kuwaki | 1154.55 |
| 3 | Yui Kawamoto | 982.84 |
| 4 | Fuka Suga | 982.68 |
| 5 | Yuna Araki | 851.44 |
| 6 | Sayaka Takahashi | 837.55 |
| 7 | Kana Nagai | 758.03 |
| 8 | Rin Yoshida | 670.11 |
| 9 | Ai Suzuki | 599.19 |
| 10 | Hibiki Iriya | 578.95 |
ここまでの5ツアーを統一フォーマットで横並びにすると、年間王者制度の「世界地図」が見えてきます。
| ツアー | システム名 | 配点方式 | 最終戦 | 年間王者ボーナス / 賞金 | 創設年 |
|---|---|---|---|---|---|
| PGA TOUR (米男子) | FedExCup | ポイント型 (プレーオフ) | TOUR Championship (8月・イーストレイク) | ボーナスプール総額 約1億ドル・王者 約1,000万ドル | 2007 |
| DP World Tour (欧州男子) | Race to Dubai | 賞金 + ポイント二重 | DP World Tour Championship Dubai (11月) | ボーナスプール600万ドル・王者200万ドル (2025) | 2009 |
| JGTO (国内男子) | ポイントランキング (2026〜。旧・賞金王) | ポイント型 (格付け加重) | ゴルフ日本シリーズJTカップ (12月) | 年間王者ボーナスなし (最終戦優勝4,000万円) | 2026 (ポイント制) |
| LPGA (米女子) | Race to the CME Globe | ポイント型 (最終戦優勝=王者) | CME Group Tour Championship (11月) | 優勝400万ドル (2025) | 2014 |
| JLPGA (国内女子) | メルセデス・ランキング | ポイント型 (グレード加重) | JLPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ (11月) | Player of the Year + 4年シード | 2012 |
こうして並べると、「ポイント型・プレーオフ (FedExCup)」「ポイント型・最終戦優勝総取り (CME Globe)」「ポイント型・グレード加重 (メルセデス・2026年移行後のJGTO)」「賞金+ポイント二重 (Race to Dubai)」と、5ツアーそれぞれが異なる思想で王者を選んでいることがわかります。かつてJGTOは賞金額そのもので決める「賞金型」の代表例でしたが、2026年からポイント型に移行し、世界の主要ツアーと足並みをそろえました。年間王者という言葉が同じでも、その重みや決まり方はツアーごとに別物なのです。
全く別物です。FedExCupはPGA TOURが単独で運営する、そのシーズン (約1年) のポイントを累積する年間王者制度です。一方OWGR (世界ランキング) はPGA・DP World・日本ツアーなど世界中のツアーを横断し、過去約2年分の成績を加重平均する国際的な指標で、年間王者を決めるものではありません。
JLPGAでは2022年から年間女王 (Player of the Year) はメルセデス・ランキング1位の選手に一本化されています。賞金ランキング1位は「賞金女王」と呼ばれますが、年間女王とは別の指標です。同じ年でも両者が別人になることがあります。
11月にアラブ首長国連邦・ドバイで開催されるDP World Tour Championship Dubaiが最終戦です。ここでRace to Dubaiの年間王者が確定します。
2025年に廃止されました。以前はランキング上位者がハンディキャップ方式の優位を得て最終戦をスタートしていましたが、現在は出場30名全員がイーブンパーから始める72ホールのストロークプレーで年間王者を決めます。
2026年シーズンから、JGTOは年間王者をポイント制で決める方式に移行しました。2025年までは、その年に獲得した賞金額そのものを年間王者 (賞金王) の指標とする伝統的な賞金制でしたが、世界の主要ツアーに倣ってポイント制へ切り替えました。賞金ランキング自体は部門別ランキングとして引き続き公表されます。
米PGA TOURのFedExCupです。プレーオフ全体のボーナスプールは総額約1億ドルにのぼり、年間王者には約1,000万ドルが贈られます。他ツアーのボーナスを大きく上回ります。
最終更新: 2026-06-04