ゴルフの「年間王者」は、世界共通のひとつの物差しで決まるわけではありません。男子の米 PGA TOUR は FedExCup、欧州 DP World Tour は Race to Dubai、国内男子 JGTO は賞金ランキング、米女子 LPGA は Race to the CME Globe、国内女子 JLPGA はメルセデス・ランキング。賞金額そのもので決める伝統型から、ポイントを積み上げてプレーオフで決める型まで方式はさまざまです。本記事は 5 つのツアーの年間王者制度を統一フォーマットで横並びにし、「いつ・いくらで・どう計算して」王者が決まるのかを 1 枚の地図にします。
「賞金王」「年間女王」「ポイントチャンピオン」——ゴルフ中継でよく聞く言葉ですが、その中身はツアーによってまるで違います。大きく分けると次の 3 系統に整理できます。
さらに、欧州 DP World Tour の Race to Dubai のように「賞金とポイントの二重制度」を採る例もあります。以下、5 ツアーを 1 つずつ見ていき、最後に比較表でまとめます。
米 PGA TOUR の年間王者を決めるのが FedExCup です。2007 年に創設され、シーズンを通して大会成績に応じたポイントを加算していきます (PGA TOUR 公式)。
レギュラーシーズン終了後、上位選手による「FedExCup プレーオフ」に突入し、最終的に上位 30 名が最終戦 TOUR Championship (米ジョージア州アトランタ、イーストレイク GC) に進出します。
大きな転換点が 2025 年の制度変更 です。それまでは FedExCup ランキング 1 位の選手が 10 アンダーからスタートする「スターティングストローク (持ちスコア)」方式でしたが、2025 年からこれを廃止。出場 30 名全員がイーブンパーから始める 72 ホールのストロークプレーで、純粋に最終戦の成績で年間王者を決める形になりました (PGA TOUR 公式発表)。
ボーナスも破格で、FedExCup プレーオフ全体のボーナスプールは総額 約 1 億ドル、年間王者には 約 1,000 万ドル が贈られます。さらにレギュラーシーズン首位など段階ごとにもボーナスが配分されます (PGA TOUR 公式)。
| 順位 | 選手 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | Scottie Scheffler | 2711.00 |
| 2 | Cameron Young | 2541.00 |
| 3 | Matt Fitzpatrick | 2494.00 |
| 4 | Collin Morikawa | 1737.00 |
| 5 | Si Woo Kim | 1704.00 |
| 6 | Ludvig Åberg | 1630.00 |
| 7 | Chris Gotterup | 1552.00 |
| 8 | Jacob Bridgeman | 1512.00 |
| 9 | Rory McIlroy | 1503.00 |
| 10 | Akshay Bhatia | 1342.00 |
欧州を拠点とする DP World Tour (旧ヨーロピアンツアー) の年間王者制度が Race to Dubai です。2009 年に従来の「オーダー・オブ・メリット (賞金ランキング)」を改称・刷新する形で誕生しました (DP World Tour 公式)。
特徴は 賞金とポイントの二重的な性格を持つこと。シーズン中の成績でランキングを積み上げ、11 月の最終戦 DP World Tour Championship Dubai (アラブ首長国連邦・ドバイ) で年間王者が確定します。
最終ランキング上位の選手には別枠でボーナスプールが配分されます。2025 年はボーナスプール総額 600 万ドル、年間王者には 200 万ドル が贈られました。ボーナスの対象になるには、最終戦を含む規定数以上の対象大会への出場が条件です (DP World Tour 公式 ボーナスプール)。
| 順位 | 選手 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | REED, Patrick | 2670.92 |
| 2 | MCILROY, Rory | 2191.86 |
| 3 | SCHAPER, Jayden | 1943.22 |
| 4 | JARVIS, Casey | 1767.40 |
| 5 | RAI, Aaron | 1717.00 |
| 6 | SULLIVAN, Andy | 1315.90 |
| 7 | BRADBURY, Dan | 1205.71 |
| 8 | NORRIS, Shaun | 1121.40 |
| 9 | LINDBERG, Mikael | 1109.28 |
| 10 | HILLIER, Daniel | 1054.20 |
国内男子ツアーを運営する JGTO (日本ゴルフツアー機構) の年間王者は、シンプルに その年に獲得した賞金額そのもので決まる「賞金ランキング」方式です。ポイントによる加重は行わず、稼いだ金額が最も多い選手が「賞金王」となります (JGTO 公式)。
王者は多くの場合、12 月上旬の最終戦 ゴルフ日本シリーズ JT カップで最終決定します。同大会は 1963 年から続く伝統の一戦で、その年の優勝者や賞金ランキング上位者など、活躍した約 30 名のみが出場できます。賞金総額は約 1 億 3,000 万円、優勝賞金は 4,000 万円と高額なため、ここでの結果が賞金ランキング順位を一気にひっくり返し、「最後の一発逆転」で賞金王が入れ替わることも少なくありません (ゴルフ日本シリーズ JT カップ 公式)。
| 順位 | 選手 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 米澤 蓮 | 51524769.00 |
| 2 | 細野 勇策 | 45954722.00 |
| 3 | 藤本 佳則 | 35303851.00 |
| 4 | 石坂 友宏 | 32865300.00 |
| 5 | 宋 永漢 | 30008000.00 |
| 6 | 堀川 未来夢 | 27463430.00 |
| 7 | S・ノリス | 23795000.00 |
| 8 | T・スマイス | 23428042.00 |
| 9 | 木下 稜介 | 22703188.00 |
| 10 | 永野 竜太郎 | 16582724.00 |
米女子ツアー LPGA の年間王者を決めるのが Race to the CME Globe です。2014 年に導入されたシーズン通算のポイントレースで、PGA TOUR の FedExCup や DP World Tour の Race to Dubai に相当する仕組みです (LPGA 公式)。
シーズン中の成績でポイントを積み上げ、ランキング上位 60 名が 11 月の最終戦 CME Group Tour Championship (米フロリダ州ネイプルズ、ティブロン GC) に進出します。最終戦は 36 ホール後のカットがない 72 ホール競技で、この大会の優勝者がそのまま Race to the CME Globe の年間王者となります。
優勝賞金は破格で、2025 年は大会総額 1,100 万ドルのうち優勝者に 400 万ドルが贈られました。優勝=年間王者=高額賞金が一本につながる、わかりやすい「勝者総取り」型の最終戦です (CME Group Tour Championship 公式)。
| 順位 | 選手 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | Nelly Korda | 2643.75 |
| 2 | Hyo Joo Kim | 1482.50 |
| 3 | Jeeno Thitikul | 1324.00 |
| 4 | Hannah Green | 1271.00 |
| 5 | Ruoning Yin | 1114.58 |
| 6 | Haeran Ryu | 952.80 |
| 7 | Lottie Woad | 925.96 |
| 8 | Miyu Yamashita | 843.29 |
| 9 | Lydia Ko | 719.05 |
| 10 | Ina Yoon | 671.67 |
国内女子ツアー JLPGA (日本女子プロゴルフ協会) の年間女王を決めるのが メルセデス・ランキングです。2012 年に「年間を通じての総合的な活躍度を評価するランキング」として制定されました (JLPGA 公式)。
最大の特徴は、大会の格 (グレード) に応じてポイントを加重する点です。3 日間競技を基準として、
といった重み付けでポイントが積み上がります。賞金額ではなく「どの格の大会で、どれだけ上位に入ったか」を測る設計です (JLPGA 公式)。
注意したいのが、かつての「賞金ランキング」との関係です。JLPGA は 2022 年から、シードやリランキングなど従来は賞金ランキングで行っていた制度をメルセデス・ランキングに一本化しました。これにより、年間女王 (JLPGA Mercedes-Benz Player of the Year) はメルセデス・ランキング 1 位の選手に贈られ、4 年間のシード権も付与されます。賞金女王 (賞金ランキング 1 位) と年間女王が別人になる年もあるため、両者の混同には注意が必要です (JLPGA 公式)。
ここまでの 5 ツアーを統一フォーマットで横並びにすると、年間王者制度の「世界地図」が見えてきます。
| ツアー | システム名 | 配点方式 | 最終戦 | 年間王者ボーナス / 賞金 | 創設年 |
|---|---|---|---|---|---|
| PGA TOUR (米男子) | FedExCup | ポイント型 (プレーオフ) | TOUR Championship (8 月・イーストレイク) | ボーナスプール総額 約 1 億ドル・王者 約 1,000 万ドル | 2007 |
| DP World Tour (欧州男子) | Race to Dubai | 賞金 + ポイント二重 | DP World Tour Championship Dubai (11 月) | ボーナスプール 600 万ドル・王者 200 万ドル (2025) | 2009 |
| JGTO (国内男子) | 賞金ランキング | 賞金額そのもの | ゴルフ日本シリーズ JT カップ (12 月) | 賞金王ボーナスなし (最終戦優勝 4,000 万円) | 伝統的 |
| LPGA (米女子) | Race to the CME Globe | ポイント型 (最終戦優勝=王者) | CME Group Tour Championship (11 月) | 優勝 400 万ドル (2025) | 2014 |
| JLPGA (国内女子) | メルセデス・ランキング | ポイント型 (グレード加重) | JLPGA ツアーチャンピオンシップ リコーカップ (11 月) | Player of the Year + 4 年シード | 2012 |
こうして並べると、「賞金型 (JGTO)」「ポイント型・プレーオフ (FedExCup)」「ポイント型・最終戦優勝総取り (CME Globe)」「ポイント型・グレード加重 (メルセデス)」「賞金+ポイント二重 (Race to Dubai)」と、5 ツアーそれぞれが異なる思想で王者を選んでいることがわかります。年間王者という言葉が同じでも、その重みや決まり方はツアーごとにまったく別物なのです。
全く別物です。FedExCup は PGA TOUR が単独で運営する、そのシーズン (約 1 年) のポイントを累積する年間王者制度です。一方 OWGR (世界ランキング) は PGA・DP World・日本ツアーなど世界中のツアーを横断し、過去約 2 年分の成績を加重平均する国際的な指標で、年間王者を決めるものではありません。
JLPGA では 2022 年から年間女王 (Player of the Year) はメルセデス・ランキング 1 位の選手に一本化されています。賞金ランキング 1 位は「賞金女王」と呼ばれますが、年間女王とは別の指標です。同じ年でも両者が別人になることがあります。
11 月にアラブ首長国連邦・ドバイで開催される DP World Tour Championship Dubai が最終戦です。ここで Race to Dubai の年間王者が確定します。
2025 年に廃止されました。以前はランキング上位者が持ちスコアの優位を得て最終戦をスタートしていましたが、現在は出場 30 名全員がイーブンパーから始める 72 ホールのストロークプレーで年間王者を決めます。
国内男子ツアーは伝統的に、その年に獲得した賞金額そのものを年間王者 (賞金王) の指標としてきたためです。ポイントによる加重を行わず、稼いだ金額が最も多い選手が賞金王となります。
米 PGA TOUR の FedExCup です。プレーオフ全体のボーナスプールは総額約 1 億ドルにのぼり、年間王者には約 1,000 万ドルが贈られます。他ツアーのボーナスを大きく上回ります。
最終更新: 2026-06-01