ゴルフ中継というと「72 ホールの総打数で順位を決めるストロークプレー」を思い浮かべる人が多いはず。でも実際のプロツアーや国際対抗戦では、ホールごとに勝敗を競うマッチプレー、2 人で 1 球を交互に打つフォアサム、各自の良いスコアを採用するフォアボールなど、多彩なフォーマットが使い分けられています。とくにライダーカップのような対抗戦・チーム戦は、フォーマットを知らないと何が起きているのか分かりません。この記事では、ツアーで使われるフォーマット用語をまるごと辞典化し、初心者がつまずきやすい「フォアサムとフォアボールの違い」「3 and 2 の意味」まで表と図解的な説明でやさしくまとめます。
ストロークプレーは、決められたホールを回って打った総打数の少なさで順位を決める方式です。プロツアーの大会のほとんどがこの形式で、男子・女子の通常大会やメジャー大会は基本的に 4 日間・72 ホール (18 ホール × 4 ラウンド) の合計打数で争われます(USGA Rules)。
72 ホールを終えて同打数の選手が複数いると、優勝を決めるためにプレーオフを行います。プレーオフには大きく 2 種類あり、1 ホールごとに決着がつくまで戦う サドンデス (Sudden Death) と、あらかじめ決めた複数ホールの合計打数で競う アグリゲート (Aggregate) 方式があります。どのホールを何ホール使うかは大会ごとに決まっており、詳しくは後述の「アグリゲートプレーオフ」で解説します。
なお下部ツアーやアマチュア競技でも基本はストロークプレーで、ゴルフのスコア表記の土台になる最も標準的なフォーマットです。
マッチプレーは、総打数ではなくホール 1 つずつの勝ち負けで勝敗を決める方式です。あるホールを相手より少ない打数で上がればそのホールを「取る (1 アップ)」、負ければ「1 ダウン」、同打数なら「ハーフ (halved=引き分け)」となり、最終的により多くのホールを取った側が勝ちます(R&A)。
マッチプレーで初心者が最も戸惑うのが、「3 and 2」「2 up」「halved」 といった独特のスコア表記です。下の表で意味を整理します。
| 表記 | 読み方・意味 |
|---|---|
| 3 and 2 | 残り 2 ホールを残して 3 アップ。逆転不可能になり勝負あり。「スリー・アンド・ツー」 |
| 2 and 1 | 残り 1 ホールで 2 アップ。最終ホールを待たず勝利確定 |
| 2 up | 18 ホールすべて戦った結果 2 ホール差で勝ち。「ツー・アップ」 |
| 1 up | 最終ホールまでもつれ、1 ホール差で勝利 |
| halved | そのホール (またはマッチ) が引き分け。対抗戦ではマッチ引き分けで両者 0.5 ポイントずつ |
ポイントは、残りホール数より大きなリードがついた時点で試合終了になること。だから「3 and 2」は 16 ホール目で握手、という具合に最終ホールまで行かずに決着することがよくあります。マッチプレーはツアー単独大会では珍しくなりましたが、ライダーカップ・プレジデンツカップ・ソルハイムカップなどの国際対抗戦、そして全英アマチュアなどのアマチュア競技で今も主役のフォーマットです。
フォアサムは、2 人 1 組のペアが 1 つのボールを交互に打つチーム戦のマッチプレー形式です。英語では alternate shot (オルタネートショット=交互打ち) とも呼ばれます。
仕組みはこうです。ティーショットの担当を奇数ホールはA選手・偶数ホールはB選手のように決めておき、そのあとは 1 打ごとにパートナーと交代しながら同じ 1 球を打ち続けます。パットも交代で打ちます。1 ホールを少ない打数で上がったチームがそのホールを取ります(Ryder Cup 公式)。
フォアサム最大の特徴は、1 つのミスがそのままペアの責任になる緊張感。自分のミスをパートナーがカバーしなければならず、逆に良いショットを打てば相手に楽をさせられます。2 人の相性とキャプテンのペアリング (組み合わせ) の妙が結果を大きく左右するため、対抗戦の駆け引きの核になるフォーマットです。
フォアボールは、同じく 2 人 1 組ですが、各自が自分のボールでプレーし、2 人のうち良い方のスコアをそのホールのチーム成績とする形式です。英語では better ball (ベターボール) とも呼ばれます。1 組 2 人 × 2 チームで合計 4 つのボールが同時に動くことから「フォア (four) ボール」の名がつきました。
フォアサムとの違いを表で整理します。
| 項目 | フォアサム | フォアボール |
|---|---|---|
| 別名 | オルタネートショット (交互打ち) | ベターボール |
| ボールの数 | ペアで 1 個 | 各自 1 個 (計 4 個) |
| 打ち方 | 1 球を交互に打つ | 各自が自分の球を最後まで打つ |
| ホールの成績 | その 1 球のスコア | 2 人のうち良い方のスコア |
| 攻め方 | ミスが許されず慎重 | 1 人が攻めても相方が保険になり攻撃的 |
フォアボールは「片方が崩れてももう一方が拾える」ため、バーディ合戦になりやすい攻撃的な展開が魅力です。対抗戦では初日・2 日目にフォアサムとフォアボールを組み合わせて行うのが定番です。なお PGA TOUR の公式大会で唯一ペア戦を採用している ザ・チューリッヒクラシック (Zurich Classic) でも、このフォアボールとフォアサムが使われます(PGA TOUR Zurich Classic、後述)。
シングルスは、ペア戦ではなく選手 1 人対 1 人で戦うマッチプレーです。国際対抗戦では最終日に組まれる定番フォーマットで、フォアサム・フォアボールを終えたあとの締めくくりとして、両チームの全選手が 1 対 1 で激突します。
たとえばライダーカップでは最終日に12 試合のシングルスが行われ、1 試合=1 ポイントで計 12 ポイントを奪い合います。マッチが引き分け (halved) に終わった場合は、両者に 0.5 ポイントずつが与えられます(Ryder Cup 公式)。
対抗戦は最終日のシングルスにポイントが集中するため、初日・2 日目のチーム戦でリードしていても最終日に大逆転が起きることがあり、観戦のクライマックスになります。
ストロークプレーで 72 ホール終了時に同打数の選手が並んだとき、あらかじめ決めた複数ホールの合計打数で優勝を決めるのがアグリゲート (aggregate) プレーオフです。1 ホールごとに即決着するサドンデスと違い、複数ホールを戦ってから合計で比べるのが特徴です。
4 大メジャーはそれぞれ決着方法が異なります。
| 大会 | プレーオフ方式 |
|---|---|
| マスターズ | サドンデス。18 番 → 10 番を交互に使い、決着まで繰り返す |
| 全米オープン (U.S. Open) | 2 ホールのアグリゲート。なお同点ならサドンデスへ |
| 全英オープン (The Open) | 4 ホールのアグリゲート。なお同点ならサドンデスへ |
| 全米プロ (PGA Championship) | 3 ホールのアグリゲート。なお同点ならサドンデスへ |
(出典: PGA.com プレーオフ形式解説、The Open 公式、Masters 公式)
つまりマスターズだけが最初からサドンデスで、ほかの 3 メジャーは「まずアグリゲートで複数ホールを戦い、それでも決まらなければサドンデスに移行」という二段構えです。順番としてはアグリゲート → サドンデスと覚えておくと分かりやすいでしょう。
ツアーやエキシビション、慈善大会で使われるその他のフォーマットも押さえておきましょう。
| 名称 | 仕組み |
|---|---|
| スクランブル (Scramble) | チーム全員がティーショットを打ち、最も良い 1 球を選んで全員がそこから次打を打つ。これを繰り返す。プロアマやチャリティ大会で人気 |
| スキンズ (Skins) | 各ホールに賞金 (スキン) を割り当て、そのホールを単独で勝った選手が総取り。引き分けなら賞金は次ホールへ繰り越し (キャリーオーバー) され、大きな賞金がかかる |
| ステーブルフォード (Stableford) | 打数ではなくホールごとのポイント制。バーディ以上に高得点、ボギー以下は減点。合計ポイントの多さで競う。PGA TOUR ではバラクーダ選手権 (Barracuda Championship) が修正ステーブルフォードを採用 |
これらは「総打数が少ない人が勝ち」という基本から外れるため、1 ホールごとの攻防やドラマ性を高める狙いで使われます。とくにスキンズは 1 ホールに賞金が集中する瞬間があり、エキシビション向きのフォーマットです。
最後に、独自のフォーマットで知られる大会を紹介します。通常のストロークプレーとは一線を画す、観戦的にも面白い大会群です。
| 大会 | フォーマット・特徴 |
|---|---|
| ザ・チューリッヒクラシック (Zurich Classic) | PGA TOUR で唯一のペア戦。2017 年にチーム戦へ衣替えし、1981 年以来となる公式ペア大会が復活した。フォアボールとフォアサムを 4 ラウンドで組み合わせる(PGA TOUR) |
| The Match | タイガー・ウッズ vs フィル・ミケルソンなどのスター対決を中心にしたエキシビションマッチ。賞金やチャリティを懸けた 1 対 1〜ペア戦 |
| グラント・ソートン招待 (Grant Thornton Invitational) | PGA TOUR と LPGA の選手が男女ペアを組んで戦う混合大会 |
| PNC選手権 (PNC Championship) | メジャー覇者とその家族 (親子) が親子ペアで出場する年末のエキシビション |
| ヒーローワールドチャレンジ (Hero World Challenge) | タイガー・ウッズ主催の 20 人招待大会。FedExCup ポイントや公式賞金は出ない非公式戦だが、世界ランキング (OWGR) ポイントは付与される(OWGR) |
| TGL | 2025 年開始のシミュレーターによるチーム対抗リーグ。タイガーやマキロイらが出場。各チームはロスター 4 名から 3 名が出場し、9 ホールの 3 対 3「トリプルス (交互打ち)」+ 6 ホールの「シングルス」で争う(TGL 公式) |
これらの大会、とくにフォアサム・フォアボール・シングルスを組み合わせる構造は、国際対抗戦の理解と直結しています。
フォアサムは 2 人で 1 つのボールを交互に打つ「オルタネートショット (交互打ち)」、フォアボールは各自が自分のボールでプレーして 2 人のうち良い方のスコアを採用する「ベターボール」です。フォアサムはミスが許されず慎重に、フォアボールは攻撃的になりやすいのが特徴です。
「3 and 2」のように表記し、これは『残り 2 ホールを残して 3 アップ』、つまり残りすべてを取られても逆転されない状態で勝利確定を意味します。最終ホールまでもつれれば「1 up」「2 up」、引き分けは「halved」と表記します。
2017 年に通常の個人戦からチーム戦へとフォーマットを刷新したためです。これは 1981 年以来となる PGA TOUR 公式のペア大会の復活で、フォアボールとフォアサムを 4 ラウンドで組み合わせる独自形式が採用されています。
各ホールにあらかじめ賞金 (スキン) を割り当て、そのホールを単独で勝った選手が賞金を獲得する対戦方式です。引き分けの場合は賞金が次のホールに繰り越され (キャリーオーバー)、後半のホールに大きな賞金が積み上がることがあります。
多くの場合アグリゲート → サドンデスの順です。全米オープン (2 ホール)・全英オープン (4 ホール)・全米プロ (3 ホール) はまず複数ホールの合計打数で競い、それでも同点ならサドンデスに移行します。マスターズは例外で最初からサドンデスです。
2025 年に始まったシミュレーターを使うチーム対抗ゴルフリーグです。タイガー・ウッズやローリー・マキロイらが出場し、各チームはロスター 4 名から 3 名が出場。9 ホールの 3 対 3「トリプルス (交互打ち)」と 6 ホールの「シングルス」を戦います。
いいえ。タイガー・ウッズ主催の 20 人招待によるエキシビション色の強い大会で、FedExCup ポイントや公式賞金は出ない非公式戦です。ただし世界ランキング (OWGR) ポイントは付与されるため、ランキング上は影響があります。
最終更新: 2026-06-01