本ブランドは現在、公式サイト・新製品ともに稼働が確認できず、事実上の休眠状態にある。以下は活動していた当時の記録として記す。
スティーブン・ボッチェリが2004年に米コネチカット州リッジフィールドでHeavy Putter, LLCとして立ち上げ、2005年のPGAマーチャンダイズショーで「Heavy Putter」を市場に投入した。翌2006年2月、製品領域の拡張を見据えて社名をBoccieri Golf, LLCへ改称している。2012年には拠点をアリゾナ州スコッツデールへ移した。
着想の中心にあったのは、パターを軽くする方向へ進んでいた当時の潮流への反論だった。ヘッドとグリップ末端の双方に重量を置き、バランスポイントを大きく手元側へ引き上げることで、手先の細かい動きを抑え、大きな筋肉でストロークさせる——という設計思想を一貫して掲げていた。
公式に確認できる最後の活動は2010年代後半で、以降は新製品の告知もサイトの更新も途絶えている。
中核は特許取得のWeight Management Systemで、ヘッド側とグリップ末端側の双方に重量を配し、バランスポイントを通常のパターより大幅に手元寄りへ移していた。ヘッド先端のウェイトを差し替えるAdjustable Tip Weightにより、同じヘッド形状のまま重量帯を変えられる構成も採っていた。
重量帯はLITE-WEIGHT / MID-WEIGHT / HEAVY-WEIGHTの3段階で展開され、同じ形状でも総重量とヘッド重量の組み合わせを選べた。ヘッド形状はブレード型・マレット型がそれぞれ複数用意され、後年にはアンカリング禁止への代替として長尺のEL(Extended Length)シリーズも加わった。また、グリップ末端にタングステンを仕込んだ単体グリップ「シークレットグリップ(Secret Grip)」も展開し、既存のクラブを後付けでカウンターバランス化できる製品として、パター本体以上に長く知られた存在だった。
重いパターは総じてテンポがゆっくりになり、短い距離での手先の緩みが出にくい反面、速いグリーンでのタッチや、軽量ヘッドに慣れた打ち手には馴染むまで時間がかかる傾向があった。
「重量でストロークを安定させる」という発想そのものは、カウンターバランス設計や重量調整式グリップという形で現在も各社に引き継がれている。ボッチェリはその流れを早い段階で単独ブランドとして提示した存在だった。
現時点で新品を入手する選択肢としては成立しない。手元側を重くする狙いで選ぶなら、カウンターバランス仕様を用意する現行の大手ブランドや、重量調整に対応するグリップメーカーの製品を検討するほうが現実的といえる。