L.A.B. ゴルフ(L.A.B. Golf)は、創業者サム・ハーン(Sam Hahn)が父・兄とともに2018年にオレゴン州ユージーンで再出発させたパター専業ブランドです。社名のL.A.B. は中核技術である「Lie Angle Balance(ライ アングル バランス)」の頭文字で、構えたときにフェース面の重心がライ角ライン上に来るよう設計することで、ストローク中にフェースが回転しないことを目指す独自構造を指します。
このLie Angle Balance自体はビル・プレッシー(Bill Pressey)がDirected Forceブランドで以前から開発していた技術で、当時Reno 2.1などのモデルとして存在していました。ハーンがReno 2.1を試して感銘を受けたのを契機に、2018年にプレッシーらの持分を買い取ってDirected Forceを再ローンチしたのが現在のL.A.B. Golfです。本社・工場はオレゴン州にあり、2022年後半からEugene Whiteaker地区を経て隣接するCreswellのEmerald Valley Golf Club隣接地に移転、2025年時点で約250〜260名規模に拡大しています。
ブランドの転機となったのが、2020年代に入ってからのPGA・LPGA・DP World各ツアーでの採用拡大です。アダム・スコットがMezz.1 Maxを起点にL.A.B. を導入したのを皮切りに、ルーカス・グローバー、ウィル・ザラトリスなど複数のツアー優勝者が乗り換え、ゼロトルク/ライ角バランス系というカテゴリーを実質的に新規創出したブランドとして認知されています。
現行ラインナップはDF(Directed Force)系のDF2.1 / DF3 / DF3i、ミッドマレットのMezz.1 / Mezz.1 Max、アダム・スコットと共同開発したOz.1 / Oz.1i、エントリー帯のLinkで構成されます。最新のDF3はやや前後長を抑えたコンパクトなマレット形状、Mezz.1は構えやすさを重視したミッドマレット、Oz.1はモダンマレット形状にライ角バランスを組み込んだモデルで、各モデルにスチールインサート版(DF3i / Oz.1i)が用意される構成です。
価格帯はLinkで実売6〜8万円、Mezz.1系・DF3系で12〜18万円、フルカスタムDF3 CustomやMezz.1 Customで20万円超が中心です。スコッティ・キャメロン・ベティナルディと比べるとミドル〜上位プレミアム帯のレンジに位置しますが、納期はカスタムオーダーで数週間〜数ヶ月待ちが常態化しているほどの需要過多状態が続いています。
ツアー導入数は急速に伸びており、Adam Scott、Lucas Glover、Will Zalatoris、Camilo Villegas、Charl Schwartzel、J.J. Spaun、Hyo Joo KimほかPGA・LPGA・DP World各ツアーで多数の使用が確認されています。リッキー・ファウラーやダスティン・ジョンソンも一時L.A.B. を導入していましたが、2025〜2026年シーズンに別メーカーへ戻したと報じられており、トルクレス系パターは「合うストロークタイプを試打で確認してから採用する」という選択肢の一つとして定着しつつあります。Mezz.1 Maxのロング/ブルーム(broomstick)スタイルへの対応がツアー側でも独自のセグメントを作っており、握り方を含めたパッティングの選択肢を広げたブランドという評価が定着しつつあります。
スコッティ・キャメロンがAcushnet傘下のフラッグシップ、ベティナルディがイリノイ工房系プレミアムというトラディショナル系の延長にあるのに対し、L.A.B. は「Lie Angle Balanceによるゼロトルク」という機能的個性で別カテゴリーを切り開いたブランドです。ヘッド形状もブレード/マレット双方の現代的解釈に振っており、見た目から「従来のパターと違う」と分かる外観を採用しています。
イーブンロールがSweetFace Technologyによるフェース打点ブレ補正、EdelがTorque Balanced設計というように、いずれも「現代的補正機能」を売りにする3社で並び称されることが多いブランド群です。L.A.B. はその中で「ストローク中のフェース回転そのものを発生させない」アプローチを取る点が独自で、フェース回転を抑えるEdel系よりも一歩踏み込んだ構造的解決という位置付けになります。
SeeMoreがRifleScope Technologyによるアライメント支援に振った設計思想であるのに対し、L.A.B. はストロークの安定とフェース回転の抑制に振った設計思想で、解決しようとしている課題のレイヤーが異なります。両者ともインサイドサイエンス型のパターブランドですが、L.A.B. はツアー導入数で先行し、SeeMoreはアマチュアフィッティング層で支持を伸ばしているという棲み分けです。