ゴルフスケールに登録されているパター948本のうち、ゼロトルク設計を明示的に採用しているのは64本(11ブランド)。市場全体の6.8 % という、まだまだ少数派のセグメントです。ところが、その内訳を時系列で並べると、2025年に劇的な変化が起きていることが見えてきます。

L.A.B. Golfが2015年にDirected Force Renoを発売してから2021年まで、国内で買えるゼロトルクパターは事実上L.A.B. のみでした。2022年にEvnrollがZEROシリーズで参入したものの、2社時代が長く続き、2024年12月にオデッセイがAI-ONE SQUARE 2 SQUAREを発売したあたりから潮目が変わります。そして2025年。テーラーメイド、PXG、SeeMore、Edel、ピレッティ、Evnroll(ORIGINリブランド)、ベティナルディが立て続けにゼロトルク系列を投入。これがいわゆる「ゼロトルク元年」と呼ばれる現象です。

この記事では、ゼロトルクの仕組みから始めて、11ブランド64モデルの全リストと選び方までを整理します。

ゼロトルクとは何か

通常のパターは、シャフトとヘッドの重心がズレているため、ストローク中にフェースが回転しようとします。これが「トルク」(回転モーメント)です。手元でこの回転を抑える必要があるため、上手な人は無意識に補正していますが、補正量がブレると芯を外したり方向性が散ったりします。

ゼロトルクパターは、シャフト軸が重心を貫通するように設計することで、この回転モーメントを物理的にほぼゼロまで小さくします。手元で何もしなくても、フェースは「勝手にスクエアのまま」進んでくれる。これが基本原理です。

各社の呼び方は微妙に違います。

  • L.A.B. Golf: Lie Angle Balance(特許技術、2015年から)
  • Evnroll: Face Forward Technology(リバースオフセットホーゼル)
  • ベティナルディ: Simply Balanced™ Technology
  • オデッセイ: Square 2 Square(S2S)
  • テーラーメイド: Spider ZT
  • PXG / SeeMore / Edel / ウイルソン / ピレッティ: それぞれ独自呼称(Zero Torque / Torque Balanced / Infinite Zero Torque / NO-TORQUE)

呼称は違えど、目的は同じ「フェース回転モーメントの最小化」です。

時系列で見る11年の歴史

出来事 この年の累計参入ブランド
2015 L.A.B. GolfがDirected Force Renoを発売 1社
2020 L.A.B. DF 2.1 1社
2021 L.A.B. B.2 1社
2022 EvnrollがZEROシリーズで参入(ER ZERO / Z1 / Z5)。L.A.B. もMEZZ.1 / MEZZ.1 MAX / LINK.1を投入 2社
2023 Toulon DesignがFormula CS / 45 / 90で参入。L.A.B. DF3投入 3社
2024春-秋 L.A.B. OZ.1 / OZ.1i、Evnroll ZERO第二世代(Z1cs / Z2s / Z5cs / Z5s) 3社
2024-12 オデッセイがAI-ONE SQUARE 2 SQUAREで参入 — 大手の参入で潮目が変わる 4社
2025春-秋 PXG / SeeMore / Edel / Evnroll(ORIGINリブランド)/ ピレッティ / テーラーメイド(Spider ZT)が連続投入 10社
2025-2026 ベティナルディANTIDOTE参入(Simply Balanced™) 11社
2026春 ウイルソンInfinite Zero Torque参入、オデッセイAi-DUAL第二世代、L.A.B. DF3i / LINK.2系 11社、64モデル

「2025年がゼロトルク元年」と呼ばれる所以は、わずか12か月で参入ブランドが4社から10社へほぼ倍増したからです。L.A.B. の10年以上に及ぶ独走時代が、いきなり終わったというのが現状です。

ブランド別 — 11社64モデル

オデッセイ(14モデル)— 大手の参入で市場を変えた立役者

シリーズ名は「Square 2 Square(S2S)」。アドレスからインパクトまでフェースをスクエアに保つ思想で、AI-ONE系9モデル + Ai-DUAL系5モデル。Ai-DUALは2026年1月に出た第二世代で、1/2-BALL系の派生も持ちます。Toulon Design(Formula)も同じくCallaway / Odyssey系列に属するため、グループとしては合計17モデルを擁します。

L.A.B. Golf(13モデル)— ゼロトルクの祖

2015年のDirected Force Renoが 元祖。その後DF 2.1 / B.2 / MEZZ.1 / MEZZ.1 MAX / LINK.1 / DF3 / OZ.1 / OZ.1i / OZ.1i HS / DF3i / LINK.2.1 / LINK.2.2と、シリーズを着実に拡張してきました。L.A.B. Golfのすべてのモデルがカスタムオーダー(ライ角・ヘッド重量はフィッティングで決まる)。Lie Angle Balance(特許)が技術の核です。

Evnroll(11モデル)— ZERO 7 + ORIGIN 4

Guerin Rifeが立ち上げたEvnrollは、2022年にZEROシリーズでゼロトルク市場へ参入。リバースオフセットホーゼルを使うFace Forward Technologyが独自設計。2024年に第二世代のcs / s系を追加、2025年にORIGINシリーズ(ER2 / ER5 / ER8 / ER10)でリブランド/拡張しました。

ベティナルディ(7モデル)— 老舗フォージドの参戦

Simply Balanced™ Technologyを採用したANTIDOTEシリーズで、SB1 / SB1 CB / SB2 / SB2 CB / SB2 Long / SB3 / SB5の7モデル。2025年から2026年にかけてのリリースで、SB5がマレット代表、SB3がハーフマレット、SB1 / SB2がコンパクト系。

PXG(6モデル)— Zero Torqueシリーズ

2025年にHot Rod ZT / Allan ZT / Allan ZT Long / Mustang ZT / Hellcat ZT / Bat Attack ZTの6モデルを一気に投入。マレットからピン型まで形状バリエーションを揃え、価格帯はL.A.B. とSeeMoreの間に位置します。

テーラーメイド(3モデル)— Spider ZT

2025年7月にSpider ZT STANDARD / LONG / COUNTER BALANCEの3モデルが登場。「Spider」のブランド資産をゼロトルク世代へつないだモデル。

Toulon Design(3モデル)— Formula

Odyssey系列のプレミアムライン。2023年にFormula CS / 45 / 90を発売。Formula 90は90度トゥルーゼロトルクを謳う特殊設計で、シャフトがヘッドに対し垂直に近い角度で接続される独特の見た目。

ピレッティ(2モデル)— NO-TORQUE

303ステンレス削り出しの老舗。NO-TORQUEシリーズとして2025年3月にFERRARA 2.5、4月にSAVONA 2.5を投入。FERRARAがブレード型、SAVONAがマレット型。

SeeMore(2モデル)— Zero Torque

2025年10月、Zero TorqueシリーズとしてSBx Platinum/Black(ブレード)とSKx Platinum/Black(マレット・ファング)の2モデルを発売。SeeMoreは元々アライメントシステムで知られるブランド。

ウイルソン(2モデル)— Infinite Zero Torque

2026年3月にInfinite Zero Torque The 606 / Lakeviewの2モデルが登場。ウイルソンの市場復帰戦略の中核として位置付けられています。

Edel Golf(1モデル)— E-Series Torque Balanced

E-T01 Zero Torqueパター。2025年11月発売。Torque Balanced思想を一本に凝縮した代表モデル。

「ゼロトルクではない」類似系 — Scotty Cameron OC / PING SCOTTSDALE TEC ONSET / Cobra CB

検索すると一緒に出てきますが、メーカー本人が「ゼロトルクではない」と明言しているモデルがいくつかあります。

  • Scotty Cameron Phantom 5 OC(2026-03発売)。Scotty本人が "low torque, NOT zero torque" と区別。OC(Onset Center)は重心位置を近づける思想で、考え方は近いが厳密にはゼロトルクではない
  • PING SCOTTSDALE TEC ONSET / KETSCH ONSET(2026-04発売)。PINGは伝統的にシャフトを重心の前に置く設計を堅持。ONSET化はしたが「ゼロトルクではない」と公式説明
  • Cobra LIMIT3D / 3DP / CBシリーズ。CBモデルの「zero degrees of toe hang」はface-balanced(フェースバランス)であって、ゼロトルクとは別概念
  • Cleveland HB SOFT 2。Speed Optimization Face Technologyが主軸で、ゼロトルクは謳っていない
  • Mizuno M.CRAFT系 / M.CRAFT X。ゼロトルクは非採用

「フェースバランス」と「ゼロトルク」を混同しやすいですが、フェースバランスは静的にヘッドを水平に保ったときフェースが上を向く性質、ゼロトルクは動的にストローク中の回転モーメントを最小化する設計、と分けて理解すると整理しやすくなります。

全64モデル一覧

ブランド モデル 発売 形状
L.A.B. Golf Directed Force Reno 2015 ネオマレット
L.A.B. Golf DF 2.1 2020 ネオマレット
L.A.B. Golf B.2 2021 ブレード
L.A.B. Golf MEZZ.1 2022 ミッドマレット
L.A.B. Golf MEZZ.1 MAX 2022 ネオマレット
L.A.B. Golf LINK.1 2022 ブレード
L.A.B. Golf DF3 2023 ネオマレット
L.A.B. Golf OZ.1 2024 ハーフムーンマレット
L.A.B. Golf OZ.1i 2024 ハーフムーンマレット
L.A.B. Golf OZ.1i HS 2025-08 ハーフムーンマレット(ヒールシャフト)
L.A.B. Golf DF3i 2026 ネオマレット
L.A.B. Golf LINK.2.1 2026 ブレード(ヒールシャフト)
L.A.B. Golf LINK.2.2 2026 ブレード(ヒールシャフト)
Evnroll ER ZEROマレット 2022 マレット(ハイMOI)
Evnroll ZERO Z1 2022 マレット
Evnroll ZERO Z5 2022 マレット(ハッチバック)
Evnroll ZERO Z1cs 2024 マレット
Evnroll ZERO Z2s 2024 ブレード
Evnroll ZERO Z5cs 2024 マレット(ハッチバック)
Evnroll ZERO Z5s 2024 マレット
Evnroll ORIGIN ER2 2025 ブレード(ワイドボディ)
Evnroll ORIGIN ER5 2025 マレット(ハッチバック)
Evnroll ORIGIN ER8 2025 マレット(スクエアバック)
Evnroll ORIGIN ER10 2025 マレット(ウィング)
Toulon Design Formula CS 2023 センターシャフト
Toulon Design Formula 45 2023 マレット
Toulon Design Formula 90 2023 マレット(90度トゥルーゼロトルク)
オデッセイ AI-ONE SQUARE 2 SQUARE 2024-12 マレット
オデッセイ AI-ONE SQUARE 2 SQUARE DOUBLE WIDE 2024-12 ピン
オデッセイ AI-ONE SQUARE 2 SQUARE JAILBIRD 2024-12 マレット
オデッセイ AI-ONE SQUARE 2 SQUARE CRUISER 2025-03 マレット
オデッセイ AI-ONE SQUARE 2 SQUARE CRUISER DOUBLE WIDE 2025-03 ピン
オデッセイ AI-ONE SQUARE 2 SQUARE CRUISER JAILBIRD 2025-03 マレット
オデッセイ AI-ONE SQUARE 2 SQUARE JAILBIRD BROOMSTICK 2025-03 マレット(ブルームスティック)
オデッセイ AI-ONE SQUARE 2 SQUARE MAX 1 2025-05 マレット
オデッセイ AI-ONE SQUARE 2 SQUARE MAX STRIPE 2025-05 マレット
オデッセイ Ai-DUAL Square 2 Square 2026-01 マレット
オデッセイ Ai-DUAL Square 2 Square 1/2-BALL BROOMSTICK MAX 2026-01 マレット(ブルームスティック)
オデッセイ Ai-DUAL Square 2 Square 1/2-BALL CRUISER MAX 2026-01 マレット
オデッセイ Ai-DUAL Square 2 Square 1/2-BALL MAX 2026-01 マレット
オデッセイ Ai-DUAL Square 2 Square JAILBIRD 2026-01 マレット
テーラーメイド Spider ZT STANDARD 2025-07 マレット
テーラーメイド Spider ZT LONG 2025-07 マレット
テーラーメイド Spider ZT COUNTER BALANCE 2025-07 マレット
PXG Hot Rod ZT 2025 マレット
PXG Allan ZT 2025 ピン
PXG Allan ZT Long 2025 ピン
PXG Mustang ZT 2025 マレット
PXG Hellcat ZT 2025 マレット
PXG Bat Attack ZT 2025 マレット
SeeMore SBx Platinum/Black 2025-10 ブレード
SeeMore SKx Platinum/Black 2025-10 マレット(ファング)
ピレッティ FERRARA 2.5 NO-TORQUE 2025-03 ブレード
ピレッティ SAVONA 2.5 NO-TORQUE 2025-04 マレット
Edel Golf E-T01 Zero Torque 2025-11 マレット
ベティナルディ ANTIDOTE SB1 2025-26 コンパクト
ベティナルディ ANTIDOTE SB1 CB 2025-26 コンパクト(カウンターバランス)
ベティナルディ ANTIDOTE SB2 2025-26 コンパクト
ベティナルディ ANTIDOTE SB2 CB 2025-26 コンパクト(カウンターバランス)
ベティナルディ ANTIDOTE SB2 Long 2025-26 コンパクト(ロング)
ベティナルディ ANTIDOTE SB3 2025-26 ハーフマレット
ベティナルディ ANTIDOTE SB5 2025-26 マレット
ウイルソン Infinite Zero Torque The 606 2026-03 マレット
ウイルソン Infinite Zero Torque Lakeview 2026-03 マレット

選び方フローチャート

「ゼロトルクパターを試してみたい」という人に向けた、おおよその選び方の道筋です。

1. カスタムフィッティングが必要かどうか

L.A.B. Golfのすべてのモデルはライ角・ヘッド重量がカスタムオーダー(フィッティング前提)。「シャフトとライ角が体に合っていなければゼロトルクの効果が出ない」という思想だからです。一方、オデッセイ / テーラーメイド / PXG / SeeMore / ピレッティ等は基本的に既製スペックで店頭購入可能。まず試してみたい人は店頭組、本気で合わせるならL.A.B.という選び分けが一般的です。

2. ヘッド形状の好みで絞る

形状 該当ブランド
マレット系(広い) L.A.B. MEZZ.1 MAX / オデッセイS2S / Spider ZT / PXG Hot Rod / Mustang / Hellcat / SeeMore SKx / Toulon Formula 45 / 90 / ウイルソン両モデル / Edel E-T01 / ベティナルディSB5
ブレード系(細い) L.A.B. B.2 / LINK系 / Evnroll Z2s / ピレッティFERRARA / SeeMore SBx / ベティナルディSB1 / SB2
ハーフマレット L.A.B. OZ系 / ベティナルディSB3

3. ヒールシャフト派ならどう絞るか

ヒールシャフトが好きな人は、L.A.B. のOZ.1i HS / LINK.2.1 / LINK.2.2が選択肢に入ります。これら以外のゼロトルクパターは多くがセンター近接シャフトです。

4. アームロック / ロングパター用途

  • アームロック: ベティナルディANTIDOTE SB2 CB / ウイルソンの一部仕様
  • ブルームスティック(長尺): オデッセイAI-ONE SQUARE 2 SQUARE JAILBIRD BROOMSTICK、Ai-DUALの1/2-BALL BROOMSTICK MAX
  • カウンターバランス: テーラーメイドSpider ZT COUNTER BALANCE / PXG(CB仕様あり)/ ベティナルディSB1 CB / SB2 CB

5. 価格帯

おおよその傾向ですが、L.A.B. とToulonとEvnroll ORIGINがプレミアム帯(5〜7万円台)、PXG / オデッセイ / テーラーメイド / ベティナルディAntidoteが4〜6万円帯、SeeMore / ピレッティ / Edel / ウイルソンが3〜5万円帯、というレイヤーになっています(為替・ジャパンスペックによって変動するので参考値)。

まとめ — 2025年が境目だった

ゼロトルクパターは、2024年12月のオデッセイ参入を境に、ニッチセグメントから主流候補のひとつへと一気に押し上げられた、というのが2026年5月時点の景色です。

11ブランド・64モデルの中から自分に合う1本を選ぶなら、まずは形状(マレット / ブレード / ハーフマレット)→ シャフト位置(センター / ヒール)→ カスタム要否(既製 / フィッティング前提)→ 価格帯の順で絞るのがシンプルです。

ゴルフスケールの全パター948本のヒストグラム機能を使えば、自分が今使っているパターのヘッド重量・ロフト・ライ角がゼロトルク勢の中央付近にあるかどうかも一目で分かります。乗り換え検討のスタート地点として活用してみてください。